中三百貨店(青森県弘前市)

破産した不遇の老舗

強烈な印象の建物だった中三弘前店(2023年撮影)

またまた衝撃的なニュースが飛び込んできました。青森県弘前市にある中三百貨店弘前店の突然の破産・閉店です。夏休みも終わりに近づいた2024年8月28日の営業をもって破産手続き開始とのことで、従業員さんたちも寝耳に水だったそうです。

中三弘前店に行ったのは1度きり、それも仕事のついでにほんの短時間寄っただけなんですが、弘前の落ち着いた旧市街地の風景と、その地で長年営業してきた老舗百貨店の強烈な見た目とのギャップに打ちのめされ、なんとか時間を見つけて再訪したいと願っていたさなかのことでした。その強烈な見た目の原因とも成っているのが宇宙基地みたいなユニークな外観。まるで昭和のヒーローもの、一定以上の年齢の方ならウルトラマンシリーズの基地などを思い浮かべた人も少なくないはずです。これが創業1896年、百年をゆうに超える歴史をもつ老舗百貨店なのですから、そのギャップはたまりませんでした(宇宙基地みたいな部分は多目的ホールとして使用されていた)。ちなみにこの建物が誕生したのは1995年のリニューアル時で、設計したのは釧路出身の建築家・毛綱毅曠(もづなきこう)氏だそうです。

お隣の五所川原で呉服店として創業して、弘前を中心に地域の顔として営業を続けてきた中三。さすがに経営陣も1990年ごろからすでに郊外型ショッピングセンターの時代が来ることは予想していて、イオンとの提携や郊外進出、さらに盛岡や青森、秋田への進出などここに至るまでにさまざまな試みをしていたそうです。しかしことごとく裏目に出て東日本大震災などの不運も重なり、2011年には一度経営破綻してしまい、その後なんとか経営再建を目指して努力をしていたようですが、コロナ禍などもありとうとう力尽きてしまったようです。2024年春にジュンク堂書店が撤退してからは、追随するように店舗が次々に出て行ってしまい、もはや閉店は時間の問題だったのかもしれません。

弘前の人にとっては地域の顔を失ってしまった喪失感もありますが、それよりショックなのが「中みそ」と呼ばれる地下フードコートの味噌ラーメンがなくなってしまったことのようで、個人ブログなどでも多数の人が悲鳴を上げています。弘前のソウルフードとも言われていただけに私も一度食べてみたいと思っていたのですが、とうとうその願いはかないませんでした。

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