魚の棚商店街(兵庫県明石市)

商店街まるごと魚市場

兵庫の明石にある魚の棚(うおんたな)商店街に寄ってきました。…といっても出張取材の合間の短い時間で、しかも夜という最悪のタイミング。でも、どうしても来てみたかったのです。というのもこの「魚の棚商店街」は、私の大好きな魚市場的アーケード商店街。「魚市場的」というのは鮮魚店がたくさん集まっていて、ローカルな海の幸がこれでもかと並んでいるようなところです。このような魚市場的商店街には上野のアメ横や、大阪の黒門市場、京都の錦市場、金沢の近江町市場などが有名ですが、これらはもはや観光客専門といった感じで商店街マニアとしてはなにかちょっと違うのです。マニア的にイケてるのは北九州の旦過市場ぐらいでしょうか。(※高地の久礼大正町市場というのがいいそうなので、こんどぜひ行ってみたいと思っています)。昔は全国各地にこういったローカル魚市場的商店街があったそうですが、今では瀕死の状況なのが残念なところ。そういうわけで貴重なローカル魚市場的商店街のひとつでもある魚の棚商店街の雰囲気を味わいたくて明石を訪ねました。

アーケードの屋根はドーム型

魚の棚商店街は約400年前に明石城の築城とともに誕生したそうで、宮本武蔵が設計した城下町の町割りによって造られたのだとか。全長350mのアーケードには明石特産の海産物や乾物などを扱う店を中心に約110店舗が並んでいます。…とはいえ訪れたのは夜9時過ぎ。店もほとんど閉まり、人通りも少なく閑散とした雰囲気が漂っています。じつはもっと開いている店があると思っていたのですが、みごとにハズレてしまいました。ところどころ飲み屋系の店がぽつりぽつりと開いているぐらいでしょうか(あたりまえ)。でも、営業をしていないシャッター街とは違うので(昼間は開いているので)にぎわいは想像できます。

珍味「干だこ」が気になります

初代のアーケードができたのは1961(昭和36)年ごろで、当時は魚の棚センター街という名前だったそう。その後二回リニューアルがあり今のデザインになったのは2005年。訪れた2019年現在でも古い地方商店街にありがちな寂れた感じはまったくなく、アーケード設備もしっかりメンテされているのがわかります。店の看板のデザイン統一や駐車場割引が受けられる店のサインなどもしっかり整備されていて、商店街組合がしっかりと機能していることが想像できます。

提携駐車場が割引になる店もひと目でわかる

ところで明石の名産と言えばとにかくタコと鯛。そのため、アーケードの装飾ももちろんタコと鯛! 天井ドームのところにタコのイラストが描かれているのですが、これが反対側から見ると鯛のイラストになっているところが凝っていますね。

天井ドームのところにタコのイラストが
反対側から見ると鯛のイラスト(写真提供:魚の棚商店街公式HPライブラリー)

それにしても、アーケードを歩いていて目に入る商店街PRの横断幕やのぼりなどは、どれも関西らしくシャレが利いたものばかりでとても凝っています。東日本ならきっと「ふざけすぎ」と却下されそうなものですが、このようなおふざけを受け入れる余裕が、ますます商店街の活気につながっているのでしょうか?

名曲「いい湯だな」をもじった横断幕も
商店街でトリックアートのこころみも
タコ、鯛だけでなく穴子も明石の名産。こちらは明治5年創業の老舗らしい

看板を見る限り集まっている店はやはり鮮魚店や焼き魚店、穴子店、鰻店などがメインですね。お惣菜や乾物店もあるようです。個人的に食べたかったのは手作りかまぼこ店と焼き穴子でしょうか。また、魚の棚商店街の大きな特徴のひとつが「昼網」であることです。これは明石の魚が早朝ではなく昼前に水揚げされ12時頃にセリが行われることで、昼過ぎには港から直送されて店頭に並ぶのです。だから魚の棚商店街の海産物は朝入荷の店よりさらに活きが良いということですね。昼間に来られなくて本当に残念です。仕方ないのでアーケード近くにあった明石焼きの店で遅い夕食をとることにしました。

商店街そばの明石焼き店で

魚の棚商店街の散策を終えて感じたのは、日本全国でアーケード商店街が寂れゆく中、こちらの魚の棚商店街は間違いなく今も元気な商店街のひとつだと言えることです。もちろん地元の人に言わせれば「昔より寂れた」と言われるのかもしれませんが、他の地方商店街から比べれば天国みたいなところです。寂れかけた商店街の特徴のひとつに、往々にしてその町とは関係のない大資本のチェーン店が進出していることが多いのですが、そういう雰囲気もまったく感じられません(実際はあるのかもしれませんが)。これも町を作った宮本武蔵のおかげなのでしょうか?

魚の棚商店街周辺のマンホールは魚デザイン

そして旅が終わってから魚の棚商店街の公式HPをチェックしたのですが、じつによくまとまっていて頻繁に更新もされています。昼間の賑わっている写真もこちらでお借りしたのですが、それまでしっかり用意されているという気の配りよう。商店街の店がうまくいってるからこそ商店街組合の予算も潤沢にあって、アーケードのメンテやHPにも使うことができるといういい循環が保たれているのでしょう。残念ながら今回訪れたのは夜だけでしたが、次回こそは昼に訪れて穴子やかまぼこなどを味わってみたいと思っています【2019年8月訪問】。

年末年始には大漁旗が飾られて人であふれる(写真提供:魚の棚商店街公式HPライブラリー)
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