アーケード撤去で生まれ変わった
沼津駅から沼津仲見世商店街を通り抜けると、大きな車道をはさんだ反対側にも商店街があります。こちらは沼津新仲見世商店街といって、名前の通り沼津仲見世商店街より少し新しい1969年に全蓋式アーケードがかけられた商店街です。この沼津新仲見世商店街のアーケードは私のようなレトロマニアにはもうヨダレが垂れるほどの「おいしい」アーケードで、それはそれはレトロな場所でした。おそらく一度もリニューアル工事等をしていなかったため、設備がそのまんま1969年当時のままで、屋根材は痛み、屋根や支柱は錆びだらけ。昼間でもどこか薄暗く、夜になるとさらに薄暗く、水銀灯の独特の色合いもあいまって、もはや女性の一人歩きが心配になる(実際は危険でもなんでもなかったですが)ほどの昭和そのままの姿が魅力でした。沼津に立ち寄るたびにここを歩きながら興奮してテンションが上がりまくっていたことを覚えています。
とはいえレトロマニアには良くても、一般のお客さんにとってはたまったもんじゃありません。錆びて朽ち果てかけたアーケードなんて危険というわけで、長年撤去が検討されていたそうですが、撤去にもかなりの予算が必要となるため、なかなか着手できずに放置されていたようです。だいたいこの種のアーケード設備は新設時の予算しか見込まれておらず、維持や撤去の予算までは想定していなかったことがほとんどです。さらに権利関係なども複雑で、そのため後年になって負の遺産として日本中で問題を引き起こしているようです。
しかし、危険なものをいつまでも放置しているわけにもいかず、とうとうアーケードが撤去されたのが2020年のこと。予算が厳しかったため、寄付を募ったりクラウドファンディングなども検討され、さまざまなワークショップや社会実験等を経て、最終的になんとか撤去にこぎつけたようです(その辺の経緯はこちらのページが詳しい)。
アーケード撤去後の新しい新仲見世商店街は、覆っている屋根がなくなったことで開放感あふれる明るい街並みに生まれ変わりました。よく見ると歩道の脇にところどころアーケードの支柱が残っているのが見えますが、これらは新しいLED照明用の支柱として流用されているようです。ちなみに、沼津仲見世商店街と新仲見世商店街の間に走っている車道は旧国道1号で、その下にはかつて「国道地下街」という地下商店街も存在していたそうです。
新しい仲見世商店街は歩道上に花やテーブルなどが置かれ、パッと見ヨーロッパあたりのおしゃれな通りに見えなくもない?です。しかしたくさんの客が戻ってくるかどうかはこれからの努力次第といったところでしょうか。魅力ある商店街には魅力ある店が必要なのは当然のこと。個人的には昔から新仲見世商店街にあるレトロな喫茶店「Köln」さんのような店を大切にして欲しいと願っています。