百貨店を辞めた老舗百貨店
久しぶりに甲府出張の用事ができました。甲府と言えば情緒あふれるたくさんの飲み屋路地と、あの岡島百貨店があります。岡島百貨店と言えば江戸時代から続くという歴史をもつ甲府一の老舗百貨店。旧市街の中心地に建つ要塞のような巨大な建物で、甲府が空襲で焼け野原になった際も岡島百貨店の建物だけ焼け残ったというほど立派で歴史あふれる百貨店です。また、甲府という一地方都市ながら全国有数の売り場面積を誇っていて、館内には滝があったり結婚式場としても使えるホールもあり、もちろんレトロな食堂もあり、さらに食堂や透明エレベーターからの眺めも絶景という、とにかく昭和の夢がたっぷり詰まったデパート中のデパートです。たまたま仕事で甲府を訪れたときに何気なく入って感動し、またきっといつか再訪してみたいと思っていたのでした。
ところが用事が終わってわくわくしながら市街地に向かうとなんか様子がおかしいのです。岡島百貨店のあるあたりには交通規制が敷かれ、なにやら大きな工事をしている様子。なにか白い大きな建物のようなものも見えます。前回来たのがだいぶ前なので記憶が定かではないんですが、確かこの辺に岡島百貨店があったはず……と思いつつその工事現場の看板を見て心底驚きました。なんと!!!!! 岡島百貨店が解体工事をしているのです。
ショックを受けてその場に座り込みました。すぐさまスマホで検索してみると、なんと2023年2月14日に85年の歴史を終えて営業終了していたとのこと。地元紙などでは大々的に報じていたようですが、地元民ではない自分には情報が入ってきませんでした。いや、単に見逃していただけなのかもしれません。検索すると出るわ出るわ、たくさんの山梨県民が別れを惜しみ、思い出を語り合った様子がネットに上がっています。山梨県民ではないし幼い頃に岡島百貨店でお世話になったわけでもないのですが、自分もまた幼い頃に地元デパート(百貨店)に夢をもらった世代なので、そういった話を聞くと感情移入して涙が出てしまいます。皆さんと一緒に閉店を惜しむことができなかった自分が悔しくてなりません。それも半年以上も経ったころにやっとその事実を知って、さみしく一人解体工事現場の前でたたずむなんてマヌケすぎ…。
しかしいくら悔やんでもあとの祭り。しかたなく近所に引っ越したらしい岡島の新店舗を見に行きます。というのも、岡島百貨店は85年の歴史を終え、規模を縮小して百貨店ではない「岡島」という普通の店として再出発したとのこと。その1ブロックほど離れた場所へ行ってみると、なんと先ほど通った場所です。そこにあった住居とテナントの複合ビルに、よく見れば「OKAJIMA」と書いてあるじゃないですか。全然気づきませんでした。
このKOKORIというビルのB1Fから2Fまでが岡島となっていました。入ってすぐには昔から使われていたであろう「岡島」という店名を記した歴史感あふれる看板が飾られています。しかし、1Fこそ「クリスチャン・ディオール」「シャネル」「エスティローダー」などの高級プランドとコスメといういかにもな百貨店時代の雰囲気が残っていますが、B1Fの食品売り場はちょっと寂しげですね。2Fのブランドブティック&リビングはなんとか威厳を保ってはいるものの…といったところでしょうか? ただ、「全国うまいもの大会」や美術展などの催事はしっかり行われているようで、そこはすでに百貨店ではなくなったというものの、元百貨店の栄華は感じることができます。ただ、売り場面積は旧店舗の7分の1、催事場も2Fの一部でしかないことなどは寂しいと言わざるを得ません。とはいうものの、このご時世で広大な売り場面積を作って客が呼べるのか?と言われればその通りなので、仕方ないところでしょう。
先ほど訪れた旧岡島百貨店があった場所には2028年をメドにタワマンと店舗の複合ビルが建ち、いずれはその場所に戻って営業再会する予定だそうです。ただし、元の場所に戻っても百貨店に戻ることはなく規模も今のまま(縮小されたまま)だそうで、もうあの頃に戻ることはなさそうです。それまで当分の間はこのKOKORIビルで営業するらしいですが、そもそもこのKOKORIビル自体、2010年にオープンして以来、客が全然集まらなかったために次々と店舗が撤退して、困り果てていたというイワク付きな場所。そもそも甲府も他の地方都市同様、中心市街地が衰退して人がいないのに、いくら店をオープンしたところでどうなるのかという疑問もあります。果たして百貨店を卒業した元百貨店が今後どうなるのか、とても気になるところです。【2024年1月訪問】
ピンバック: 井上百貨店(長野県松本市) – ぶらぶら商店街ときどき百貨店