名城のもとに広がる元気アーケード

まずはじめに謝らなければなりません。じつは姫路をナメていたんです。姫路というと「姫路城」ぐらいしかイメージがなく、まあよくあるごく普通の地方都市だと勝手に思っていたのです。そして地方都市ならまあまあ衰退していて、アーケード商店街も人通りが少なく空き店舗だらけのシャッター街に違いない…と。

大変申し訳ありません。姫路は大都市でした。それもいまだ元気いっぱいの。いいわけになってしまいますが、姫路って関東では知名度が低いのです。「姫路って兵庫?岡山?」ぐらいに思っている人多いと思います。それがこんなにたくさんのアーケード商店街が残っていて、それもそこそこ賑わっているとは…全くの誤算でした。
少し調べてみると、姫路は古くから西国街道にはじまり但馬街道・因幡街道・出雲街道などの重要な街道が交差する交通の要衝として栄えてきた重要な都市だったんですね。奈良時代には国府や国分寺が置かれ、播磨地方の中心として発達してきたとのこと。姫路城ができたのもそんな下地があったからなんです。そして近代では軍都として、さらに製鉄業などの重工業も進出して、大変栄えた地域だったと知りました。すみません、まったく勉強不足でした。

■現在の商業の中心はみゆき通り

さて、姫路は播磨地方の重要都市ですから、中心地である姫路の町は商業も盛んで、アーケード商店街も発達しました。その中心的な存在が姫路駅からまっすぐ北にある姫路城にかけて伸びる一本道の御幸(みゆき)通りです。戦後ぐらいまではこの通りが姫路のメインストリートで、5間(9m)あった道幅は当時の市内では最も幅が広く、バスも通っていたそうです。その後1955(昭和30)年に現在のメインストリートでもある大手前通が完成してバスはそちらを走るようになり、こちらのみゆき通りは完全に商店街として位置づけられ、ますます賑やかになっていったそうです。

そして昭和30年頃からアーケードがかかりはじめ、1975~1978(昭和50~53)年に初代の全長650mのアーケード商店街へと改装されたとのこと。さらに2014年にリニューアルされた現在のアーケードは、木目調の柱で入り口は姫路城大手門をイメージさせるデザイン。天井には城郭建築などに多く取り入れられる唐破風(からはふ)があしらわれるなど、城下町・姫路をイメージした和風の造りになっています。

この通りは一般的にひとつの商店街として認知されているようですが、じつは姫路駅前に近い方(市道十二所前線より南側)は「姫路駅前商店街」で、姫路城に近い側(市道十二所前線より北側)は「みゆき通り商店街」と正式名称が違います。これは商店街組合が分かれているためだそうですが、姫路市民でもほとんど気づいている人はいないそうで、一般的にはなんとなくひとまとめに「みゆき通り商店街」として通っているようです。

このみゆき通り商店街には、地元銀行やドトールなどのカフェ、百円ショップやドラッグストア、ブティックなど、いわゆる商店街の中心地にあるような店が多いです。チェーン店も多数。しかし、ところどころに呉服店や貴金属店、レコード店など昔ながらの店も残っています。そうそう、なぜか眼鏡店が多いなあと思っていたら、あの有名な「眼鏡の三城(パリミキ)」の総本店がみゆき通りにありました。眼鏡の三城は姫路発祥だったんですね、知りませんでした。

散策のついでにみゆき通りのカフェ「はまもと」に寄って、大好きな姫路名物アーモンドトーストとシナモントーストのハーフ&ハーフを食べてみました。姫路のアーモンドトーストはクセになりますよ。
■突然レトロになる本町商店街

姫路駅からみゆき通り商店街をそのまま北に進むと、国道2号を超えたところから「本町商店街」に変わります。両側に並ぶ店が突然レトロになり、雰囲気もぐんと庶民的に。めちゃくちゃ古い古書店やランドセルイチオシの鞄屋さん、昔ながらの町の電気屋さんなどレトロな店が目立ちます。姫路城が近いだけに、観光客向けの店もちらほら。

しかしみゆき通り商店街はモダンだったアーケード天井も、ここはなぜか古い昭和のままです。中央が昔ながらの布で、両サイドが塩化ビニル製波板を貼り合わせた天井は、もはや風情さえ感じます。みゆき通りと比べてこの違いはなんなのでしょうか?(商店街組合の予算的な問題とか、方針の違いとか?)

でもレトロマニア的にはみゆき通りよりこちらの方が雰囲気ありますね。ちなみに、このスタイルの天井は、別項でご紹介する「城巽商店街」も同じなので、かつてはこれが姫路のアーケードのスタンダードだったのかもしれません。そして、この商店街の端まで来ると目の前に姫路城がどーん!とそびえ立っています。ちょっと気分がアガりますね。

■裏路地の雰囲気を楽しめるおみぞ筋商店街

さて、メインアーケードの「みゆき通り商店街~本町商店街」の東側に平行して伸びる少し狭い通りのアーケードもあります。それが「おみぞ筋商店街」です。道幅はみゆき通りの半分以下とずいぶん細いですが、雰囲気が路地裏的でワクワクさせてくれます。この通りはかつて小さな「溝」が脇にある4mほどの細い道だったことが名前の由来だそう。

みゆき通りは大手チェーン店が多いのですが、このおみぞ筋はこぢんまりした個人経営の店が多いので、個人的にはこっちの方が好きです。個人でも入りやすい手頃なグルメの店もこちらの方が多い印象。ただ、みゆき通りは空き店舗が目立つようなことはなかったですが、こちらは若干シャッターが閉まった空き店舗もあって、地方都市の寂れた感じも少し感じられます。

さて、このおみぞ筋も「みゆき通り商店街」同様に姫路城側(市道十二所前線より北側)が「おみぞ筋商店街」で、姫路駅側(市道十二所前線の南側)が「駅前おみぞ筋商店街(通称:パステルおみぞ)」に分かれています。が、こちらもその辺の厳密な区分は地元の人さえあまりよくわかっていないようで、なんとなくその筋全体が「おみぞ筋商店街」として認知されているようです。


パステルおみぞは完全に駅周辺の飲食街といったイメージで、飲み屋なども多く見られます。で、パステルおみぞに交差する「共和通り」や「駅前フラワー通り」のアーケードもあり、このあたりもいっしょくたになって駅前の飲食街エリアという感じでしょうか。

それにしても姫路の町は人出が多いですね。東京都心部や大阪の商店街にもひけをとりません。寂れた地方商店街ばかりを巡っている自分にとっては新鮮な驚きでした。さて、この二本の「みゆき通り」「おみぞ筋」を歩いているうちにこれと交差する別の商店街も気になってきました。長くなったので、次の項で紹介したいと思います。(→姫路アーケード街後編へと続く)【2019年8月訪問】